2chブログを始めとするネットメディアが2014年6月に「キメラ」のニュースを取り上げた理由

この記事を読みました。

返信もどき KADOKAWAエンターブレインホビー書籍部デスク岡本真一 | StarGazer -スターゲーザー-

フリーゲーム作家の星見テラセさんのブログです。2014年6月にKADOKAWAエンターブレインから自身のゲームシナリオを下にしたライトノベルを出版したのですが、編集者に対して何やら不信感を持っているとのことです。

 

この記事の中では、不信感を持ったきっかけの一つとして2chコピペブログを利用した編集によるステマ疑惑が書かれています。

 

 ただ何故かAmazonカートが開いたあと、
 はちま寄稿やオレ的ゲーム速報@刃を筆頭とする2chまとめブログ連で「キメラ」に関するほぼ同じ記事が掲載され、広告欄にキミ箱が貼ってありました。
 ちなみにそのキメラ記事のソースは12年くらい前のもので、今更取り上げた理由は、謎ですね。

 まとめブログでの「キメラ」記事に関して先方に尋ねてみましたが、
「知らない」「わからない」「そんなことを知る必要があるのか」
 と、何故か感情的に突っぱねられました。
 本人が言うには、数年前にネット流行語にもなった「ステマ」の事件も「よく知らない」とのことです。

 

この文章で星見さんが匂わせているのは、2014年6月に複数の人気コピペブログが「キメラ」のニュースを掲載した理由は、同月発売された自身の小説「キミはキメラ 箱庭の鬼」の宣伝依頼を受けたためではないか、ということです。

 

編集者が人気コピペブログに自社作品のAmazon広告を掲載するように依頼していたかは知りませんが、時系列を抑えるだけで、何故2014年6月に「キメラ」の記事をネットメディアがこぞって取り上げたかは理解できます。

 

星見さんのツイートから不信感の原因となった「まとめブログ」の「キメラ」記事のニュースは以下のものになります。

 

まとめブログのソースは、livedoorニュースに配信された2014年6月11日の「らばQ」の記事になります。

「お腹を痛めて産んだ子なのに、DNAが一致しない!」あやうく子供を取り上げられかけ、さらに犯罪の疑いまでかけられてしまった女性 - ライブドアニュース

問題が起きたのは2002年で、リディアさんが25歳のとき。4歳と3歳の2人の子供に加え、お腹の中には妊娠3か月の子を身ごもっていました。

 「らばQ」本家の記事では、参照した英語ソースへのリンクも分かります。

「お腹を痛めて産んだ子なのに、DNAが一致しない!」あやうく子供を取り上げられかけ、さらに犯罪の疑いまでかけられてしまった女性:らばQ

事件が起きたのは2002年のことですが、「らばQ」が参照していたのは2006年のアメリカABCニュースの記事でした。

She's Her Own Twin - ABC News

REDDIT」を通じて「らばQ」がこの話題を知ったことも分かります。

TIL a woman filing for public assistance failed 4 DNA tests to prove maternity of her children. She was taken to court and risked losing custody. It was later discovered she had absorbed her twin in the womb and her reproductive organs carried different DNA to other parts of her body. : todayilearned

つまり、2006年のABCニュースが、英語掲示板「REDDIT」で2014年6月9日に話題とされたことで、「らばQ」の目に入り、livedoorに配信され、まとめブログに取り上げられ、Amazon広告が貼られることになった、という流れになります。

 

「らばQ」が記事にした流れは以上ですが、「まとめブログ」がこぞってこの話題を取り上げた理由はもう少し別にあるでしょう。

2014年6月9日に最高裁でDNA鑑定を巡る裁判が開かれていたからです。

 結婚後に生まれた子が、夫以外の男性と血縁関係があることがDNA鑑定で分かった場合、戸籍上の親子関係を取り消せるかが争われた2件の訴訟で、最高裁第1小法廷(白木勇裁判長)は9日午後、当事者の主張を聞く弁論を開いた。

父子関係、最高裁で弁論 DNA鑑定か、民法「嫡出推定」か :日本経済新聞

 一般ニュースでも大きく話題になった裁判ですが、女性の不貞行為に関わるものでもあり、2ch系の「まとめブログ」にとっては美味しいネタに違いありません。DNAキメラの話題は、これらの裁判で扱われている「DNAの親子鑑定は絶対!」という常識を崩すものであり、取り上げようとするのは当然のことと思います。

 

REDDIT」で何で2014年6月に2006年の記事をサルベージされたのかは分かりません。

が、このDNAキメラの話題は、2014年3月に日本で大きく取り上げられていました。

テレビ朝日で3月4日に放送された「トリハダ[秘]スクープ映像100科ジテン」で、DNAキメラを巡る同じ事件が再現ドラマで放送されています。

[トリハダ[秘]スクープ映像100科ジテン 【2時間スペシャル】 ]の番組概要ページ - TVトピック検索

放送中はTwitterでも注目キーワードに関連ワードが入っていたはずです。

 

テレビ朝日が何故この時期にDNAキメラを取り上げたかと言えば、大沢樹生さんの息子のDNA鑑定騒動があったり、先のDNA鑑定での父子関係取り消し裁判の控訴審があったりして、これも世間が注目していたから、そのカウンターとしてDNA親子鑑定の例外事例を取り上げたと推測できるわけです。

 

まあ、この番組内容を覚えていた角川の担当者が小説の販促のために、REDDITにスレを立てさせるところから「まとめブログ」に取り上げさせてAmazon広告を貼ってもらうまでの流れをlivedoorに頼んでいたという可能性を否定する根拠まではありませんけど、たぶん「そういうあれ」は考えにくいのではないかなぁ。