コロコロコミックは「うんこ・ちんちん原理主義」を守れるか

 小学館の児童向け漫画雑誌コロコロコミックが、歴史上の人物・チンギス・ハーン肖像画に「ちんちん」と落書きする漫画を掲載し、在日モンゴル人社会とモンゴル大使館から猛抗議を受け謝罪した問題で、2018年3月6日、コロコロコミック編集部は改めて謝罪した上で、本の回収を発表した。

コロコロ公式サイト(2018年3月6日)  

「コロコロコミック」販売中止 - 共同通信 2018/3/6 12:35

 

 私が気になるのは、コロコロコミックの「うんこ・ちんちん原理主義」が今後どうなるのか、といった点である。モンゴル人社会は、今回のことについて単に「英雄チンギス・ハンの肖像に落書きされた」ことだけを怒っていたのではない。駐日モンゴル大使館の抗議文では、児童向け書籍に、男性器である「ちんちん」を描いていたことが「わいせつ物頒布」「児童の権利の保護に関する法律違反」に当たっていて問題である、とも述べている。

 

 一般雑誌に無修正で「ちんちん」を掲載したことが「わいせつ物頒布」であるとも抗議を受けていたのだ。この点について小学館やコロコロ編集部がどのように回答したのかは報じられていない。

 

 図らずも、昨年2017年はコロコロコミック40周年の年であり、コロコロの編集長が各ネットメディアのインタビューで「コロコロの『うんこ・ちんちん原理主義』」について熱心に話していた。

 

出版不況なのに、『コロコロコミック』が80万部も売れているヒミツ (ITmedia ビジネスオンライン) - Yahoo!ニュース2017/6/28(水) 8:17配信

 

コロコロ:「ブームを作るのが使命」創刊40周年もブレない姿勢 編集長に聞く - MANTANWEB(まんたんウェブ)2017年09月16日

 

 これら2本のインタビュー記事で、コロコロ編集長は、「うんこ」「ちんちん」といった下ネタについて熱く語っている。「親に、下品だから子供に買い与えたくないと思われたとしてもコロコロコミックは子供が自分の意思で買うもの」であり、「下ネタが受けるのは、コロコロコミックは子供たちだけが楽しんでいる閉じられた世界だからであり、男の子たちが安心して読める」などと、読者層を分析している。

 

 今回のモンゴル人社会からの抗議活動により、コロコロコミックは「閉じた世界」ではなくなってしまった。当分の間は、監視の目でもって世界的に「何が描かれるか」が注目される。

 

 「おぼっちゃまくん」や「わ〜お!ケンちゃん」など、コロコロのギャグ漫画には「ちんちん」は欠かせなかった。コロコロコミックで、今後「ちんちん」を表現し続けることは可能なのか否か。

 児童漫画雑誌でも、もう「ちんちん」を修正無しで描くことはできなくなるのか。

 コロコロ編集部はどう判断するのだろうか。

 

 

経緯

2018年2月22日 元横綱朝青龍がコロコロ批判をツイート

Asashoryu 第68代横綱朝青龍 on Twitter: "なー言いとけどなー‼️ 先祖バカにするお前ら‼️ 品格がない日本人‼️ 許せない‼️謝れ‼️謝れ‼️謝れ‼️どこのゴミの会社⁉️… "

 

2月23日昼 駐日モンゴル大使館が日本の外務省に対して抗議。Facebookで公使参事官の署名入り抗議文を掲載*1

「月刊コロコロコミック(3月号)で、モンゴル国の歴史と文化だけではなく、日本の政府、国民のモンゴルとの友好関係を強化し続けたいという意志までも見下すような内容の、道徳性の欠如したイラストが掲載されました。

これは単なる非道徳的な行為だけではなく、わいせつ物頒布、児童の権利の保護に関する日本の法律にも違反していると考えています。

したがって、このような非礼な行為を非常に残念に思い日本外務省に抗議の意を示すとともに、この件に関して法律の下での適切な対応をしていただけることを期待しています」(原文はモンゴル語。翻訳・バークレーハウス語学センター)

 

2月23日 横綱白鵬がブログでコロコロ批判

ameblo.jp

 

2月23日 コロコロ編集部が謝罪。小学館側がモンゴル大使館に出向いて謝罪文提出

コロコロ公式サイト(2018年2月23日)

 

2月25日 紀伊國屋書店が全店でコロコロ3月号販売中止

 紀伊国屋書店は25日から、全店舗で3月号の販売を取りやめた。*2

 

 

2月26日 小学館前で在日モンゴル人90人が雑誌の回収を求める抗議デモ

www.sankei.com

デモ参加者は「侮辱は許さない」「(雑誌を)回収せよ」と激しいシュプレヒコールを上げた。

 

<コラム>チンギス・ハン侮辱として在日モンゴル人が出版社...|レコードチャイナ2018年2月27日(火) 20時40分

▼「これからの動きは相手の対応次第、現在は抗議活動の世界的拡大を抑えている」と説

明 
在日モンゴル人抗議委員会は26日のデモに際して抗議文を用意していた。小学館に対しては9項目の対応を要求した。主要な要求は謝罪広告コロコロコミック3月号の回収などだ。また、著者の吉野あすみ氏にも公開で謝罪することも求めた。 

さらに3月2日までに納得できる回答を得られない場合には、訴訟などの手段も辞さないとの考えを明らかにした。 

在日モンゴル人抗議委員会によると、同問題はモンゴル国や米国のモンゴル人団体など世界各地のモンゴル人コミュニティーにも伝わった。すでに抗議運動開始の打診があったが、現在は「日本で対処する考えなので待ってほしい」として抑えているという。ただし、納得のいく回答が得られなかった場合には、抗議活動が世界的に拡散する見込みとした。 

 

 

2月27日 コロコロ編集部が「イタズラクガキコンテスト」の中止を発表

コロコロ公式サイト(2018年2月27日)

 

2月28日 書店チェーン「リブロ」がコロコロ3月号の販売自主規制をしていたことがTwitterで報告される 

 

3月6日 小学館がコロコロ3月号の回収を発表し、『やりすぎ!!!イタズラくん』作者の吉野あすみの謝罪文を掲載

コロコロ公式サイト(2018年3月6日)